【丸暗記しない高校生物】長日植物・短日植物とは?限界暗期と光中断を解説

丸暗記しない高校生物

長日植物・短日植物がわからない人へ限界暗期を使った考え方を解説

短日植物は、夜が長いと花芽をつくる。この「短い」と「長い」のねじれは、限界暗期という1本の基準を使えばほどけます。

「短日植物は、連続した暗期が限界暗期より長いと花芽をつくる」

そう説明されても、「短いの? 長いの?」と混乱してしまう人が多い単元です。

この単元を理解するには、まず「何の長さを、何と比べているのか」を整理しましょう。限界暗期は、難しい仕組みの名前ではありません。花芽をつくる条件を考えるための、夜の長さの基準です。

SECTION 01長日植物と短日植物は、何が違う?

植物の中には、昼や夜の長さに応じて、花芽をつくるものがあります。花芽とは、成長して花になる芽のことです。このように、昼や夜の長さに反応する性質を光周性といいます。

基本的には、次のように整理できます。

植物の種類花芽をつくる条件
長日植物昼が長い、つまり夜が短い
短日植物昼が短い、つまり夜が長い

なお、昼や夜の長さに関係なく花芽をつくる植物もあります。これを中性植物といいます。

「短日植物なのに、長いと花芽をつくる」という説明は、矛盾していません。名前の「短い」は昼について、説明の「長い」は夜について述べています。

ここを区別するだけで、少し見通しがよくなります。

ただし、「夜が長い」とは、何時間のことでしょうか。8時間でしょうか、12時間でしょうか。

その判断に必要なのが、限界暗期です。

SECTION 02限界暗期は「夜の長さの基準」

暗期とは、光が当たらない時間のことです。まずは「夜」と考えて構いません。ただし、ここで数えるのは、途中で光が入らずに続いた暗さ、つまり連続した暗期です。この点は、後半の光中断で効いてきます。

限界暗期とは、花芽形成の反応が変わる境目となる、連続した暗期の長さです。

「限界」と聞くと、「これ以上はダメ」という上限を想像するかもしれません。しかし、ここではいったん「境目」と読み替えましょう。

短日植物では、その境目より夜が長いことが花芽をつくる条件になります。長日植物では、反対に、その境目より夜が短いことが条件になります。

つまり、同じ「限界暗期」という言葉でも、花芽をつくるのが境目のどちら側なのかが違います。

限界暗期10時間を境目に、短日植物は暗期がそれより長いと花芽をつくり、長日植物はそれより短いと花芽をつくることを示した図 限界暗期 10時間 短日植物 花芽をつくらない 花芽をつくる 長日植物 花芽をつくる 花芽をつくらない 0 4 8 12 16 連続した暗期の長さ(時間) → 夜が長い

SECTION 03限界暗期が10時間なら、どうなる?

説明用に、限界暗期がどちらも10時間の短日植物と長日植物を考えてみましょう。

短日植物は、夜が10時間より長いと花芽をつくる

短日植物は、長い夜が花芽をつくる合図になります。

夜が8時間では、基準の10時間に届きません。一方、夜が12時間なら、基準より長いので花芽をつくる条件を満たします。

長日植物は、夜が10時間より短いと花芽をつくる

長日植物は、短い夜が花芽をつくる合図になります。

夜が8時間なら、基準の10時間より短いため、条件を満たします。夜が12時間になると、基準より長いため、条件を満たしません。

連続した暗期短日植物:限界暗期10時間長日植物:限界暗期10時間
8時間条件を満たさない条件を満たす
12時間条件を満たす条件を満たさない

「限界暗期より長い」という情報だけでは、花芽をつくるかどうかは決まりません。短日植物なのか、長日植物なのかと組み合わせて判断します。

※ここでは高校生物の基本的なモデルとして整理しています。実際には、花芽を「つくる・つくらない」がはっきり分かれる植物だけでなく、日長によって花芽をつくる時期が早まったり遅れたりする植物もあります。

SECTION 04比べるのは「昼と夜」ではない

よくある勘違いが、「短日植物は、昼より夜が長ければ花芽をつくる」というものです。

比べる相手は、昼の長さではありません。その植物の限界暗期です。

例えば、限界暗期が9時間の短日植物を、昼14時間・夜10時間の条件で育てるとしましょう。

昼14時間・夜10時間の1日。夜は昼より短いが、限界暗期9時間より長いので短日植物でも花芽をつくる 0時間 24時間 昼 14時間 夜 10時間 限界暗期 9時間 夜は昼より短い。でも限界暗期より長いので、短日植物でも花芽をつくる
比べる相手は昼の長さではなく、限界暗期。

この場合、夜は昼より短くなります。しかし、夜10時間は限界暗期の9時間より長いため、花芽をつくる条件を満たしています。

「短日」という名前でも、昼が12時間未満でなければいけないわけではありません。

また、限界暗期は植物によって異なります。すべての植物に共通する、固定の時間ではないことも押さえておきましょう。

SECTION 05夜の途中で光を当てると、どうなる?

ここまで整理できたら、暗期の途中で短時間だけ光を当てる「光中断」を考えてみましょう。

例えば、短日植物に、花芽をつくるのに十分な長さ、つまり限界暗期より長い夜を与えます。その夜の途中で短時間だけ光を当てると、花芽形成が妨げられます。

暗い時間の合計はほとんど変わっていないのに、結果が変わるのです。このことから、暗い時間は単純に足し算すればよいのではなく、連続していることが重要だと分かります。

一方、長日植物では、長い夜の途中で光を当てると、花芽形成が促されます。

高校生物の典型的な実験では、「夜の途中の光によって、長い夜の効果が打ち消される」と考えると整理しやすくなります。

これを限界暗期で言い直してみます。限界暗期10時間の植物に12時間の夜を与え、その真ん中で光を当てると、連続した暗期は6時間ずつに分かれます。どちらも10時間に届かないので、短日植物は条件を満たさなくなり、長日植物は条件を満たすようになります。

12時間の夜の真ん中で光を当てると、連続した暗期が6時間ずつに分かれ、限界暗期10時間に届かなくなる様子 限界暗期 10時間(比べる基準) 光を当てない 連続した暗期 12時間 短日植物:条件を満たす 長日植物:条件を満たさない 真ん中で光を当てる 6時間 光 6時間 短日植物:条件を満たさない 長日植物:条件を満たす 暗い時間の合計はほぼ同じでも、連続した暗期が限界暗期に届かなくなる

問題を解くときは、光で区切られたあとの暗期のうち、いちばん長いものを限界暗期と比べましょう。

光を当てるタイミングが夜の端に近いと、残った暗期が限界暗期を超えることもあります。また、光の種類や強さによっても効果は変わるので、示された照射条件や実験結果も確認しましょう。

光中断に有効な光の代表が赤色光です。その受容には、光受容体であるフィトクロムが関わっています。

SECTION 06確認問題:同じ夜に、両方が花芽をつくることはある?

次の2種類の植物を考えましょう。

  • 短日植物A:限界暗期は9時間
  • 長日植物B:限界暗期は11時間

連続した暗期を10時間にすると、どちらが花芽をつくる条件を満たすでしょうか。

答えは、両方です。

連続した暗期10時間は、短日植物Aの限界暗期9時間より長く、長日植物Bの限界暗期11時間より短いので、両方が条件を満たす 長日植物Bの限界暗期 11時間 連続した暗期 10時間 短日植物Aの限界暗期 9時間 A:基準より長い → 条件を満たす / B:基準より短い → 条件を満たす
同じ10時間の夜でも、比べる基準がそれぞれ違う。

短日植物Aにとって、10時間の夜は限界暗期の9時間より長くなります。一方、長日植物Bにとって、10時間の夜は限界暗期の11時間より短くなります。

同じ10時間の夜でも、それぞれの基準と比べれば、両方が条件を満たすことがあります。

長日植物と短日植物の問題では、まず植物の種類を確認し、次に「実際の暗期」と「その植物の限界暗期」を比べましょう。

短日植物は基準より長い夜、長日植物は基準より短い夜。この比較ができれば、用語を丸ごと暗記しなくても判断できます。

+α)「短日」なのに、なぜ夜の長さで考えるのか

この記事の最初で引っかかった「短日植物なのに、長いと花芽をつくる」というねじれ。これには、研究の歴史が関係しています。

日の長さが花芽形成を左右することを示したのは、アメリカ農務省の研究者、W. W. GarnerとH. A. Allardです。

きっかけは、メリーランド・マンモスという品種のタバコでした。このタバコは、メリーランド州の畑では生育期間中に花をつけないのに、冬の温室では花をつけました。

GarnerとAllardは、光の弱さや栄養不足、植え替えの影響なども原因の候補として考えました。そのうえで、夏の畑で午後遅くに光を通さない覆いをかぶせ、日の長さを人工的に短くしてみます。すると、夏なのにタバコは花をつけました。花をつけるかどうかを決めていたのは、日の長さだったのです。この成果は1920年に発表されました。

長日植物・短日植物という名前も、昼の長さ(日長)に注目した呼び方です。

ところが1938年、Karl C. HamnerとJames Bonnerが、オナモミの仲間(Xanthium pennsylvanicum)を使ってこの反応を詳しく調べると、見え方が変わります。

このオナモミは、明期が15時間より短いと花芽をつくりました。一方、明期が16時間より長く、暗期が8時間より短い条件では、花芽をまったくつくりませんでした。暗期で見ると、8時間あたりが境目になっていたわけです。

HamnerとBonnerは、この植物の反応は明期の長さではなく、主に暗期の長さに対する反応だと結論づけています。さらに、花芽形成に関わる反応が暗期の間に進み、それが光によって妨げられる、という考えも示しました。本文で扱った光中断の話は、ここにつながっています。

名前は昼の長さで付いているのに、判断の決め手は夜の長さだった。冒頭で「短いの? 長いの?」と混乱したのは、このずれが用語にそのまま残っているからです。

ちなみに、このオナモミは短日植物なのに、昼14時間でも花芽をつくります。本文で「短日という名前でも、昼が12時間未満でなければいけないわけではない」と書いた、その実例です。

「なぜそうなるのか」まで理解する授業

長日植物・短日植物は、「短日は夜が長い」と丸暗記しようとすると、光中断や限界暗期の問題でかえって混乱しやすい単元です。何と何を比べているのかが分かれば、図の問題も迷わず解けます。

オーオンでは、高校生物を高校生物だけで終わらせず、大学での学びや研究、医療などにもつながる土台として、仕組みから理解する授業を行っています。

書き手紹介

野中詩生|オーオン塾長

オンライン学習塾・個別指導塾オーオン代表。現在進行形でウイルスの研究にも取り組んでおり、生物を専門としています。

高校生物では、「仕組み」を理解できる説明を大切にしています。

この単元は、名前と判断基準がずれている、高校生物の中でも珍しい単元です。混乱の原因は用語のほうにあって、仕組みそのものは「連続した夜の長さを、基準と比べる」だけ。そこが見えると一気に楽になるので、個人的に教えていて気持ちのいい単元です。

参考文献

  1. Garner WW, Allard HA. Effect of the relative length of day and night and other factors of the environment on growth and reproduction in plants. Journal of Agricultural Research. 1920;18:553–606.
  2. Hamner KC, Bonner J. Photoperiodism in Relation to Hormones as Factors in Floral Initiation and Development. Botanical Gazette. 1938;100(2):388–431. 原著論文
  3. Amasino RM. My favourite flowering image: Maryland Mammoth tobacco. Journal of Experimental Botany. 2013;64(18):5817–5818. 論文
  4. Parker MW, Hendricks SB, Borthwick HA, Scully NJ. Action Spectrum for the Photoperiodic Control of Floral Initiation of Short-Day Plants. Botanical Gazette. 1946;108(1):1–26. 原著論文
  5. American Chemical Society. Isolation of Phytochrome(National Historic Chemical Landmarks). 公式ページ

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