歌の中に出てくる「進化論」という言葉。
生物を少し知っていると、そこからキリンの首やダーウィンの自然選択まで話が広がります。
Mr.Childrenに『進化論』という曲があります。
その中に、出てくる歌詞に、こんなのがあります。
「首の長い動物は生存競争のためにそのフォルムを変えてきた」
「強く望むことが世代を超えていつしか形になるならこの命も無駄じゃない」
この曲を聴いたとき、生物をまあまあ勉強している人なら、
「あれ、これはラマルクっぽい進化論かもしれない」
と思うかもしれません。
今回は、ミスチルの『進化論』を入り口に、生物の「進化論」を整理します。
キリンの首は、なぜ長くなったのか
進化論の話でよく出てくるのが、キリンの首です。
キリンはなぜ首が長くなったのか。
なんとなく考えると、
と思いたくなります。
そして、首を伸ばした親から、少し首の長い子どもが生まれる。
その子どももまた頑張って首を伸ばす。
そうして世代を重ねるうちに、キリンの首はどんどん長くなっていった。
この説明は、かなり分かりやすいです。
しかも、ロマンチックな気がします。
努力が次の世代に受け継がれていく感じがするから。
ただ、現在の生物学では、この説明は基本的には正しいとはされていません。
キリンが頑張って首を伸ばしたから、首が長くなったわけではない。
もともと首が長めの個体がいた。
その個体の方が、その環境で生き残りやすかった。
そして、首の短い個体は生き残りにくかった。
結果として、首の長い個体が増えていった。
これが、現在の進化論の基本的な考え方です。
ラマルクの進化論は、かなりロマンチック
キリンが頑張って首を伸ばし、その変化が子どもに伝わる。
この考え方に近いのが、ラマルクの進化論です。
キリンの首のような、よく使う部分は発達し、逆にあまり使わないところは衰退する。
これが、用不用説です。
そして、生物が生きている間に身につけた特徴が、子どもに伝わる。
これを「獲得形質の遺伝」といいます。
たとえば、キリンが高いところの葉を食べるために、首を伸ばそうと努力する。
すると、そのキリンの首が少し長くなる。(用不用説)
その特徴が子どもに伝わる。(獲得形質の遺伝)
さらにその子どもも首を伸ばそうと努力する。
そうやって、世代を重ねるごとに首が長くなっていく。
これがラマルク的な説明です。
筋トレをした親から、最初から筋肉ムキムキの子どもが生まれるわけではないし、
勉強を頑張った親から、最初から英単語を覚えている子どもが生まれることもない。
生きている間に努力して身につけた特徴が、そのまま遺伝するわけではないんです。
だからこそ、その逆を行くラマルクの進化論はロマンがある。
でも、現代の生物学では採用されていません。
ダーウィンの進化論
現在の進化論の基本になっているのは、ダーウィンの考え方です。
ダーウィンの進化論では、自然選択が重要になります。
その環境で生き残りやすい特徴を持った個体が残る。
その個体は繁殖できるため、その性質が広まる
キリンの首で考えてみます。
昔のキリンの仲間には、首が少し長い個体もいれば、少し短い個体もいました。
(※キリンの祖先は今でいう「オカピ」みたいなやつだったらしいから、全体的にそこまで首は長くないはずです。)
その環境で、高いところの葉を食べられる個体の方が生き残りやすかった。
首が長い個体はエサを取りやすい。
首が短い個体はエサを取りにくい。
その結果、首が長い個体の方が生き残り、子どもを残しやすかった。
すると、世代を重ねるうちに、首が長い個体が増えていきます。
これが自然選択です。
もともと個体差があった。
その中で、環境に合っていたものが残った。
合わなかったものは減った。
進化は、努力の物語というより、選別の結果です。
突然変異があるから、進化の材料が生まれる
自然選択が起こるためには、まず個体差が必要です。
全員がまったく同じなら、選ばれようがないからです。
では、その違いはどこから来るのか。
大きな要因の一つが、突然変異です。
DNAやRNAに変化が生じ、個体の形質が変化する現象
DNAがコピーされるときに、完全に同じように写されるとは限りません。
そこに小さな違いが生まれることがあります。
その違いが、生物の特徴に影響することがあります。
もちろん、突然変異の多くは特に大きな影響を持たなかったり、不利だったりします。
でも、たまたま環境に合った変化が起きることもあります。
その変化を持つ個体が生き残りやすければ、次の世代に伝わりやすくなります。
かなりざっくり言えば、こういう流れです。
進化は「目的を持って進む」わけではない
進化という言葉を聞くと、何かがどんどん良くなっていくイメージを持つかもしれません。
でも、生物の進化は、目的を持って一直線に進むわけではありません。
キリンは、最初から「将来は首を長くしよう」と決めていたわけではないし、
鳥は、最初から「空を飛ぶ生物になろう」と計画していたわけではない。
たまたま生まれた違いが、その環境で有利だった。
その結果として、特徴が残っていった。
それが進化です。それだけのことです。
性選択という考え方もある
進化を考えるとき、自然選択だけではなく、性選択も大事です。
性選択とは、子孫を残すうえで有利な特徴が残りやすい、という考え方です。
たとえば、クジャクのオスの羽はかなり派手です。
あの羽は、敵から隠れるには不利そうです。
目立つし動きにくそう。
それでも、メスへのアピールとして有利なら、その特徴は残ることがあります。
進化は、生き残るだけでは終わりません。
子どもを残せるかどうかも重要です。
この視点が入ると、生物の形や行動はさらに面白く見えてきます。
木村資生の中立説も知っておきたい
高校生物では、木村資生の中立説も出てきます。
DNAの変異は基本的に生存に有利でも不利でもなく中立であり、中立な変異が遺伝的浮動によって集団内に蓄積することが進化の主要因
ダーウィンの自然選択では、有利な特徴が選ばれて残る、というイメージがあります。
もちろん、それは大事です。
ただ、DNAやタンパク質のレベルで見ると、すべての変化が自然選択で説明できるわけではありません。
生き残りに大きな影響を与えない変化もあります。
その有利でも不利でもないような変化が蓄積していき、偶然集団の中に広がることもあります。
これを中立進化といいます。
この考え方を出したのが、木村資生です。
ここまで分かると、進化論はかなり奥行きが出ます。
生物を勉強しておくと、日常の言葉も面白くなる
生物を勉強していると、日常の中で聞く言葉も少し違って見えてきます。
たとえば、Mr.Childrenの「進化論」を聴いたとき。
普通なら、気にもならないと思います。
もちろん、それでいいです。
でも、生物を知っていると、
- これはラマルクっぽい考え方かもしれない
- 現代の進化論とは少し違うかもしれない
- でも、物語としてはかなり美しい
そんなふうに見えてきます。
これが、勉強の面白いところです。
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