腎臓の計算問題原尿量・再吸収率の求め方
問題:尿1.5 Lから、原尿量を求める
ある人の1日の尿量は 1.5 L でした。原尿と尿に含まれるイヌリンと尿素の濃度は、次のとおりです。
| 物質 | 原尿中の濃度 | 尿中の濃度 |
|---|---|---|
| イヌリン | 0.10 g/L | 12 g/L |
| 尿素 | 0.30 g/L | 18 g/L |
イヌリンは糸球体でろ過されますが、細尿管では再吸収も分泌もされません。この問題では、尿素の分泌は考えないものとします。
- 1日にできた原尿は何Lですか。
- 原尿に含まれる水のうち、約何%が再吸収されましたか。水の量は、原尿や尿の体積で近似して求めてください。
- ろ過された尿素のうち、何%が再吸収されましたか。
問1尿に出たイヌリンから、原尿量を逆算する
最初に求めるのは、1日に尿へ出たイヌリンが、全部で何gだったかです。尿1 Lに12 g含まれていて、尿が1.5 L出たので、イヌリンは 12 g/L × 1.5 L = 18 g です。
この18 gは、どこから来たのでしょうか。原尿ができ、それが尿になるまでに、物質が移動する向きは次のとおりです。
| はたらき | 物質の移動 |
|---|---|
| ろ過 | 糸球体の血液 → ボーマンのう。ろ過されてできた液が原尿 |
| 再吸収 | 細尿管などの中 → 血液側。水やグルコースなどが血液側へ戻る |
| 分泌 | 血液側 → 細尿管の中。ろ過とは別に、途中で物質が管の中に加わる |
尿に出る量は、ろ過された量から再吸収された量を引き、分泌された量を足したものです。イヌリンはろ過で原尿に入ったあと、再吸収で減ることも、分泌で増えることもありません。つまり、尿に18 g出たなら、原尿にも18 g入っていたといえます。
原尿1 Lに含まれるイヌリンは0.10 g。18 gが入っていたので、原尿量は 18 g ÷ 0.10 g/L = 180 L です。
この計算を一つの式にまとめると、次のようになります。
原尿量 = 尿量 ×(尿中濃度 ÷ 原尿中濃度)
※原尿から尿になるまで、その物質の量が変わらないときに使えます。
「尿中濃度 ÷ 原尿中濃度」を濃縮率といいます。イヌリンの濃度は 12 ÷ 0.10 = 120倍。同じ18 gが120倍の濃さになったので、液量は120分の1です。だから、尿量を120倍すれば原尿量に戻せます。
問題によっては、原尿中の濃度の代わりに血しょう中の濃度が与えられます。イヌリンのように糸球体で自由にろ過される物質なら、血しょう中と原尿中の濃度を同じとみなして計算できます。
問2水の再吸収率は、何を分母にする?
180 Lの原尿から、最後に1.5 Lの尿が出ました。この問題では原尿と尿の体積を水の量とみなすので、血液側に戻った水は 180 − 1.5 = 178.5 L です。
再吸収率が表すのは、最初にろ過された量のうち、どれだけ戻ったか。分母は最初の180 Lです。
水の再吸収率 = 178.5 ÷ 180 × 100 ≒ 99.2%
問3尿素は60倍に濃くなった。では、量は増えた?
尿素の濃度は、原尿の0.30 g/Lから尿の18 g/Lへ、60倍になっています。けれど、g/Lはあくまで液体1 Lあたりの量です。全部で何gあるのかは、濃度に液量を掛けて求めます。
| 液体 | 尿素の濃度 | 液量 | 尿素の量 |
|---|---|---|---|
| 原尿 | 0.30 g/L | 180 L | 54 g |
| 尿 | 18 g/L | 1.5 L | 27 g |
原尿に入った54 gのうち、尿に出たのは27 g。この問題では分泌を考えないので、差の27 gが再吸収されたといえます。
尿素の再吸収率 =(54 − 27)÷ 54 × 100 = 50%
尿素の量は半分になりましたが、液量は120分の1になりました。尿素が減った割合より液量が減った割合の方がずっと大きいので、尿素の濃度は60倍になります。
ここで問1に戻ってみましょう。尿素の濃縮率を使って 1.5 × 60 と計算すると、原尿量は90 Lになってしまいます。イヌリンで求めた180 Lと合わないのは、尿素は原尿から尿になるまでに量が変わるからです。原尿量を逆算するときは、濃縮率を計算する前に、その物質の量が原尿から尿になるまで変わらないかを確認しましょう。
+α|イヌリンは、なぜ原尿に入れるのに血液に戻れないのか?
原尿に入るときに通るのは、糸球体のろ過膜。血液側に戻るときに越えるのは、細尿管の壁です。この2つの関門では、物質の通り方が違います。
イヌリンは果糖が鎖のようにつながった分子で、糸球体のろ過膜は通れます。一方、細尿管の壁は細胞でできています。グルコースは輸送体を使ってその細胞に取り込まれ、血液側へ移れます。イヌリンは細尿管の壁をほとんど通れず、管の中に残ります。[1] [2]
この違いを示す実験があります。穴のあいた膜だけなら、グルコースもイヌリンも通ります。ところが、膜に近位尿細管に似た培養細胞を並べると、グルコースは管の内側にあたる面から反対側へ運ばれ、イヌリンは通りませんでした。同じ膜でも、細胞の層を加えると、物質によって通り方が変わったのです。[3]
では、グルコースを取り込む輸送体がうまく働かなかったらどうなるでしょうか。家族性腎性糖尿では、近位尿細管の輸送体SGLT2の働きが弱く、血糖値が正常でも、回収しきれなかったグルコースが尿に出ます。[4]
水が血液側へ戻っても、イヌリンは管の中に残ります。だからイヌリンは濃くなるけれど、量は変わらない。問1で「尿に18 gあったなら、原尿にも18 gあった」といえたのは、このためです。
「なぜその式が使えるのか」まで理解する授業
イヌリンと尿素の違いを説明できると、初めて見る問題でも、どの数値を使えばいいか判断できます。オーオンの個別指導では、こうした考え方を確かめながら、共通テストや看護系入試の問題にも取り組みます。
おすすめ記事
- 共通テスト生物の勉強法 →知識を整理し、実験やグラフの考察に使うには
- 免疫とは? 自然免疫と獲得免疫 →「人体・恒常性」の単元で、免疫の全体像を整理する
- 体液性免疫と細胞性免疫の違い →抗体が働く場合と、細胞が対応する場合を比べる
