【丸暗記しない高校生物】DNA複製の仕組みとは?リーディング鎖・ラギング鎖・岡崎フラグメントを解説

丸暗記しない高校生物

DNA複製の仕組みとは?
リーディング鎖・ラギング鎖・岡崎フラグメントを解説

DNAポリメラーゼが5′→3′方向にしかDNAを伸ばせない。この1つの制限から、リーディング鎖・ラギング鎖・岡崎フラグメントの意味を整理します。

前編では、DNAの複製方法として、保存的複製・半保存的複製・分散的複製という3つの仮説が考えられていたこと、そして、メセルソンとスタールの実験によって半保存的複製が支持されたことを説明しました。

では、半保存的複製をするとして、DNA鎖は具体的にどのように伸びていくのでしょうか。

DNA複製はどのように進む?

Step1)DNAの2本鎖を開く

DNAを複製するためには、まず、二重らせんを構成している2本の鎖を離す必要があります。

この働きをする酵素がDNAヘリカーゼです。

「酵素」という単語を見て、「あっ、タンパク質ね」と瞬発的に思えなかった人は、この記事を読破した後、こちらも読んでみてください。

DNAヘリカーゼが塩基間の水素結合を切り、二重らせんをほどいていきます。

ほどくと言っても、刀で切断するように一気にスパン!というわけではなく、まずは一部分が開き、その分け目が広がっていきます。

そのため、開いた部分はアルファベットのYのような形になります。

このYの分かれ目の部分を複製フォークといいます。

DNAヘリカーゼが二重らせんを開き、複製フォークができる様子を示した図
DNAヘリカーゼによって二重らせんが開かれ、複製フォークが形成されます。

Step2)DNAポリメラーゼが新しいDNA鎖をつくる

DNAヘリカーゼによって2本鎖が開かれると、それぞれの古い鎖を鋳型として、新しいDNA鎖がつくられます。

新しいDNA鎖をつくる中心的な酵素が、DNAポリメラーゼです。

DNAポリメラーゼは、鋳型となるDNAの塩基配列に従って、相補的なヌクレオチドを並べます。

ただし、DNAポリメラーゼにはとても大きな制限があります。

DNAポリメラーゼは、伸びているDNA鎖の3′末端にしか、新しいヌクレオチドをつなげられません。

DNAの鎖には、5′末端と3′末端という「両端」があります。

この両端は、川でいう源流と河口のようなもので、DNA鎖には向きがあります。

DNAポリメラーゼは、伸びているDNA鎖の3′末端にヌクレオチドをつなげていきます。

その結果、新しくできるDNA鎖は、5′側から3′側へしか伸びません。

ここが、リーディング鎖とラギング鎖が生まれる理由です。

DNAの2本鎖は逆向きに並んでいる

DNAを構成する2本鎖は、同じ向きに並んではいません。

一方が5′側から3′側へ向かっている場合、もう一方は3′側から5′側へ向かっています。

つまり、2本の鎖は逆向きです。

この関係を逆平行といいます。

一方で、DNAポリメラーゼが新しいDNA鎖を伸ばせる方向は、5′側から3′側のみです。

そのため、複製フォークの両側で、まったく同じようにDNAを合成することはできません。

少し分かりづらいので、下の図を参考にしてください。

DNA複製フォークにおける5′3′の向き、リーディング鎖、ラギング鎖、岡崎フラグメント、RNAプライマー、DNAリガーゼを示した全体図
DNAは逆平行に並び、DNAポリメラーゼは5′→3′方向にしか新しい鎖を伸ばせません。

リーディング鎖とラギング鎖

片方の新しいDNA鎖は、複製フォークが開いていく方向に合わせて、連続的に合成できます。

この、連続的に合成される新しいDNA鎖をリーディング鎖といいます。

一方、もう片方の鋳型DNAでは、鎖の向きが反対です。

しかし、DNAポリメラーゼがDNAを伸ばせる方向は変わりません。

新しいDNA鎖は、こちら側でも5′側から3′側へしか合成できません。

そのため、複製フォークが開くたびに、DNAポリメラーゼは複製フォークの進行方向とは反対向きに、短いDNA鎖をつくります。

そして、複製フォークがさらに開くと、また新しい場所から短いDNA鎖をつくります。

このように、一度に長いDNA鎖をつくるのではなく、短いDNA鎖を何度もつくるわけです。

この短いDNA鎖を岡崎フラグメントといいます。

岡崎フラグメントをつくり、後からつなぎ合わせることで合成される新しいDNA鎖が、ラギング鎖です。

リーディング鎖連続的に合成される
ラギング鎖岡崎フラグメントとして不連続に合成される

DNAポリメラーゼは、何もないところから合成を始められない

ここで、もう1つ問題があります。

DNAポリメラーゼは、何もないところから新しいDNA鎖をつくり始めることができません。

すでに存在している鎖の3′末端に、ヌクレオチドを付け足すことしかできないのです。

つまり、DNAポリメラーゼが働くためには、合成を始めるための短い鎖が必要です。

この短い鎖をプライマーといいます。

DNA複製で使われるプライマーは、DNAではなくRNAでできていて、RNAプライマーと呼ばれます。

そして、このRNAプライマーをつくる酵素がプライマーゼです。

DNAポリメラーゼは、RNAプライマーの3′末端を起点として、新しいDNA鎖を伸ばしていきます。

リーディング鎖でも、合成を始めるためにはRNAプライマーが必要です。

一方、ラギング鎖では、新しい岡崎フラグメントをつくるたびに新たなRNAプライマーが必要になります。

RNAプライマーは後からDNAに置き換えられる

RNAプライマーは、DNA複製を始めるための一時的な部品で、そのまま残るわけではありません。

岡崎フラグメントが合成された後、RNAプライマーは酵素によって取り除かれます。

そして、RNAプライマーが取り除かれた部分は、DNAのヌクレオチドで埋められます。

なお、RNAプライマーを除去してDNAに置き換える具体的な仕組みは、原核生物と真核生物で異なります。

高校生物では、まず「RNAプライマーは後から取り除かれ、その部分はDNAに置き換えられる」と押さえておけば十分です。

DNAリガーゼが岡崎フラグメントをつなぐ

RNAプライマーが取り除かれ、その部分がDNAに置き換えられても、隣り合うDNA断片の境目にはDNA鎖の切れ目が残っています。

この切れ目をつなぐ酵素がDNAリガーゼです。

DNAリガーゼは、隣り合うDNA断片の間にリン酸ジエステル結合を形成し、1本の連続したDNA鎖にします。

DNA複製の流れを整理

ここまでの流れを整理します。

  1. DNAヘリカーゼがDNAの2本鎖を開く
  2. プライマーゼがRNAプライマーをつくる
  3. DNAポリメラーゼがRNAプライマーの3′末端から、新しいDNA鎖を5′側から3′側へ伸ばす
  4. リーディング鎖は連続的に合成される
  5. ラギング鎖は、岡崎フラグメントとして不連続に合成される
  6. RNAプライマーが取り除かれ、その部分がDNAに置き換えられる
  7. DNAリガーゼがDNA断片同士の切れ目をつなぐ

用語だけを見ると複雑ですが、原因は1つです。

DNAポリメラーゼは、DNAを5′側から3′側へしか伸ばせない。

この制限があるため、逆平行に並ぶ2本のDNA鎖では、一方が連続的に、もう一方が不連続に複製されます。

リーディング鎖、ラギング鎖、岡崎フラグメントという言葉を別々に丸暗記するより、

「DNAポリメラーゼは5′→3′方向にしかDNAを伸ばせない」

という1つの制限から考えると、かなり整理しやすくなります。

+α)岡崎フラグメントはどのように発見されたのか

岡崎フラグメントは、日本人研究者の岡崎令治博士と岡崎恒子博士らの研究によって発見されました。

1968年、岡崎らは、大腸菌や、T4ファージに感染させた大腸菌を使って、合成直後のDNAを調べました。

短時間だけ、放射性同位体のトリチウム(³H)で標識したチミジンを取り込ませ、新しく合成されたDNAを調べると、短いDNA鎖が検出されました。

さらに、DNAリガーゼが正常に働かないT4ファージを使った実験では、新しく合成された短いDNA鎖が細胞内に蓄積しました。

DNAリガーゼが働かなければ、短いDNA鎖同士をつなぐことができません。

そのため、短いDNA鎖が短いまま残ったと考えられます。

これらの結果から、DNAの一部は、初めから長い鎖として連続的につくられるのではなく、短いDNA鎖として合成された後につなぎ合わされることが示されました。

この短いDNA鎖が、現在、岡崎フラグメントと呼ばれているものです。

教科書で普通に使われている「岡崎フラグメント」という言葉には、日本人研究者の名前がそのまま残っています。

「なぜそうなるのか」まで理解する授業

DNA複製は、用語を一つずつ覚えるより、5′→3′という制限から考えた方が整理しやすい単元です。

オーオンでは、用語の暗記だけで終わらず、「なぜその仕組みになるのか」を一緒にたどりながら高校生物を学びます。

書き手紹介

野中詩生|オーオン塾長

オンライン学習塾・個別指導塾オーオン代表。
現在進行形でウイルスの研究も行っており、生物が専門。

高校生物では、用語だけを覚えるより、「なぜそうなるのか」を理解した方が、結果的に覚えやすくなります。
今回のDNA複製も、リーディング鎖・ラギング鎖・岡崎フラグメントを別々に覚えるのではなく、5′→3′という制限から考えると、かなり整理しやすい単元です。

参考文献

  1. Okazaki R, Okazaki T, Sakabe K, Sugimoto K, Sugino A. Mechanism of DNA Chain Growth. I. Possible Discontinuity and Unusual Secondary Structure of Newly Synthesized Chains. Proceedings of the National Academy of Sciences. 1968;59(2):598–605. 原著論文
  2. Sugimoto K, Okazaki T, Okazaki R. Mechanism of DNA Chain Growth. II. Accumulation of Newly Synthesized Short Chains in E. coli Infected with Ligase-Defective T4 Phages. Proceedings of the National Academy of Sciences. 1968;60(4):1356–1362. 原著論文
  3. Cooper GM. The Cell: A Molecular Approach. DNA Replication. NCBI Bookshelf.
  4. Alberts B, Johnson A, Lewis J, et al. Molecular Biology of the Cell. DNA Replication Mechanisms. NCBI Bookshelf.

この記事を書いた人

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