DNA複製とは?
半保存的複製とメセルソン・スタールの実験を解説
DNAは、細胞分裂の前に複製されます。その複製方法がどのように確かめられたのか、3つの仮説と実験結果から見ていきます。
DNA複製とは
初めに、背景から話します。
真核生物の多くの細胞には核があり、核の中にはDNAが入っています。
生物は、生きていく過程で細胞を増やします。
だから私たちは成長するし(物理的に)、傷は治る。
しかし、細胞だけを増やしても、DNAが1つ分しかなければ、分裂後の細胞にDNAを割り振れません。
そのため、細胞分裂の前にはDNAも増やしておく必要があります。
この作業、つまり、DNAをコピーして同じ塩基配列をもつDNAをつくる作業がDNA複製です。
DNAが複製された後に細胞が分裂し、それぞれの細胞へDNAが分配されます。
DNAでは、対になる塩基の組み合わせが決まっています。(AとT、GとC)
この関係を相補性といいます。
DNAを構成する2本鎖が1本ずつに分かれ、それぞれの鎖に相補的な新しい鎖がつくられることで、もとのDNAと同じ塩基配列をもつDNAを複製できます。
この複製方法を半保存的複製といいます。

ここで、少し歴史的な話をしたいと思います。
今紹介した半保存的複製は、複製の方法として初めから解明されていた訳ではありません。実は、複数の仮説の中の1つに過ぎませんでした。
DNA複製についての3仮説
DNAの複製方法として、次の3つが考えられていました。
以下、もとのDNA鎖を「古い鎖」、複製によってつくられたDNA鎖を「新しい鎖」とします。
①保存的複製
保存的複製では、もとの2本の古い鎖が分かれることはなく、そのまま残ります。
それを基に、2本とも新しい鎖からなる真新しいDNAを作ります。
つまり、複製後には、古い鎖だけからなるDNAと新しい鎖だけからなるDNAが出来るわけです。
②半保存的複製
半保存的複製では、古い鎖と新しい鎖を1本ずつ含むDNAが2つできます。
③分散的複製
分散的複製では、古いDNAと新しくつくられたDNAが、細かく分かれて混ざり合います。
複製後のDNAには、古い部分と新しい部分が分散して含まれます。

現在では、DNAは半保存的に複製されることが分かっています。
それを確かめたのが、メセルソンとスタールの実験です。
メセルソンとスタールの実験
1958年、メセルソンとスタールは、大腸菌と窒素の同位体を使って、DNAの複製方法を調べました。
実験で使われたのは、次の2種類の窒素です。
DNAを構成する塩基には窒素が含まれています。
そのため、大腸菌を¹⁵Nを含む培地で何世代も育てることでDNAに¹⁵Nが取り込まれていき、通常より密度の高い(≒重い)DNAを持つ大腸菌を作成できます。
この大腸菌を¹⁴Nを含む培地へ移すと、その後に新しく合成されるDNA鎖には¹⁴Nが取り込まれます。
これによって、もとから存在していた古い鎖と新しくつくられた鎖を、DNAの密度の違いから区別できます。
DNAの密度を調べる
大腸菌から取り出したDNAには、密度勾配遠心をかけます。
これにより、DNAは密度に応じて
- ¹⁵Nを含む重いDNAは下側
- ¹⁴Nを含む軽いDNAは上側
- ¹⁵Nと¹⁴Nの両方を含むDNAは中間
というように分離されます。
1回目の複製後
¹⁵Nを含むDNAをもつ大腸菌を、¹⁴Nを含む培地へ移し、DNAを1回複製させます。
3つの仮説から予想される結果は異なります。
もとの重いDNAがそのまま残り、別に軽いDNAがつくられます。
そのため、重いDNAの帯と軽いDNAの帯の2本が現れるはず。
すべてのDNAが、¹⁵Nを含む古い鎖と¹⁴Nを含む新しい鎖のミックスになります。
そのため、中間の位置に1本の帯が現れるはず。
古いDNAと新しいDNAが混ざり合うため、分散的複製でも中間の位置に1本の帯が現れるはず。
実験では、中間の位置に1本の帯が現れました。
この結果から、保存的複製は否定されました。
ただし、この時点では半保存的複製と分散的複製を区別できません。
2回目の複製後
さらに¹⁴Nを含む培地で、DNAをもう1回複製させます。
2回目の複製後には、¹⁵Nの鎖と¹⁴Nの鎖からなる中間のDNAと¹⁴Nの鎖2本からなる軽いDNAができます。
そのため、中間と軽い位置に2本の帯が現れるはず。
分散的複製では、古い部分と新しい部分が混ざったDNAがつくられ続けます。
複製を重ねるとDNA全体は軽くなりますが、帯は1本のまま、軽い側へ移動するはず。
実験では、中間のDNAと軽いDNAの2本の帯が現れました。
この結果は、半保存的複製の予想と一致します。
こうして、DNAは半保存的に複製されることが示されました。
この実験をしたのが、メセルソンとスタールという2人のアメリカ人博士です。
ちなみに、メセルソン博士はまだご存命ですし(2026年7月29日現在)、スタール博士は2025年までご存命でした。この話、比較的最近の話なんです。
DNA複製の具体的な仕組みは後編で説明します
この記事では、DNA複製の概要と半保存的複製、メセルソンとスタールの実験を説明しました。
後編では、DNAポリメラーゼ、岡崎フラグメント、リーディング鎖、ラギング鎖を中心に、DNA複製の具体的な仕組みを説明します。
「なぜそうなるのか」まで理解する授業
高校生物は、用語だけを覚えても、実験問題や考察問題になると手が止まりやすい科目です。
半保存的複製も、言葉だけではなく、3つの仮説と実験結果をつなげて考えると理解が増すはずです。
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参考文献
- Meselson M, Stahl FW. The Replication of DNA in Escherichia coli. Proceedings of the National Academy of Sciences. 1958;44(7):671–682. doi:10.1073/pnas.44.7.671
- Davis TH. Meselson and Stahl: The art of DNA replication. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2004.
- Harvard University, Meselson Bio and CV.
- The Scientist. Molecular Biologist Franklin Stahl Dies at 95. 2025.
