遺伝子の変異とは?
置換・SNP・フレームシフトなどをわかりやすく解説
遺伝子レベルの変異とは、DNAの塩基配列が変わるタイプの変異です。
この記事では、遺伝子レベルの変異に絞って説明します。
遺伝子レベルの変異とは、DNAの塩基配列が変わるタイプの変異です。
塩基置換とは何か
塩基置換とは、DNAの塩基が別の塩基に置き換わる変異です。
DNAはA・T・G・Cの4種類の塩基の並びで遺伝情報を保持しています。
たとえば、ある場所のAがGに変わる。CがTに変わる。
このように、1つの塩基が別の塩基に変わることを塩基置換といいます。
塩基置換は、遺伝子の変異を考えるうえで基本になる変化です。
DNAは、転写や翻訳を経てタンパク質がつくられるときの、大本になるものです。
あわせて読みたい セントラルドグマとは?DNA・RNA・タンパク質の流れをわかりやすく解説そのため、塩基配列が変わると、つくられるタンパク質の形やはたらきが変わることがあります。
これが、塩基置換によって性質が変わる基本的な流れです。
SNP(一塩基多型)とは何か
SNPは、「スニップ」と読みます。
正式には、single nucleotide polymorphism といい、日本語では一塩基多型といいます。
SNPとは、DNAの塩基配列のうち、1つの塩基の違いとして見られる多型です。
SNPは単に「1回だけ起きた変異」というより、集団の中で個体差として見られる一塩基の違いを指します。
多くのSNPは、遺伝子やタンパク質の発現制御に直接関わらない場所にあります。
そのため、SNPがあっても、目に見える特徴の違いにつながらないことが多い。
一方で、一部のSNPは、遺伝子の発現量やタンパク質の性質に関わることがあります。
そのため、SNPは個人差、薬剤への反応、病気との関係を調べるときなどにも使われます。
生物の入試問題では、SNPという言葉が出てくることがあります。
「1つの塩基の違いが、個体差や遺伝的な特徴の違いと関係することがある」と理解しておくとよいです。
SNPは、どこに起きるかによって意味が変わります。
タンパク質に翻訳される領域にあるSNPを、cSNPといいます。
cSNPの中には、アミノ酸の種類を変えるものがあります。
アミノ酸が変わると、タンパク質の立体構造やはたらきに影響が出ることがあります。
一方で、塩基が変わってもアミノ酸の種類が変わらないものもあります。
これをsSNPといいます。
sSNPのsは、silentのsです。
塩基は変わっているがアミノ酸は変わらないため、タンパク質への影響が出にくい変異です。
塩基が変わっても、影響が出ないことが多い
遺伝子に変異が起きても、必ず性質が変わるわけではありません。
その代表例が、同義置換です。
同義置換とは、塩基は変わるが、指定されるアミノ酸は変わらない置換です。
たとえば、あるコドンが別のコドンに変わっても、同じアミノ酸を指定することがあります。
これは、1つのアミノ酸に複数のコドンが対応していることがあるからです。
塩基配列は変わっているが、アミノ酸配列は変わらない。
この場合、タンパク質そのものは変わらないため、大きな影響が出にくくなります。
ただし、影響が出ない理由は同義置換だけではありません。
アミノ酸が変わったとしても、タンパク質のはたらきにあまり関係しない場所であれば、大きな影響が出ないことがあります。
つまり、「変異がある=性質が違う」ではありません。
変異が起きたあとに、その変異がどこにあるのか、アミノ酸を変えるのか、タンパク質のはたらきに関係するのかを考える必要があります。
欠失・付加(挿入)とフレームシフト
塩基置換では、ある塩基が別の塩基に置き換わります。
一方で、塩基が抜ける変異もあります。
これを欠失といいます。
逆に、塩基が新しく加わる変異もあります。
これを付加(または挿入)といいます。
欠失や付加で重要なのは、読み枠がずれることです。
mRNAは、3つの塩基を1組として読まれます。
そのため、塩基が1つ抜けたり、1つ加わったりすると、その場所から後ろの読み方がずれることがあります。
この読み枠のずれを、フレームシフトといいます。
そのため、単なる塩基置換よりも、タンパク質への影響が大きくなりやすいです。
また、変異によって途中に終止コドンができることもあります。
終止コドンは、翻訳を止める合図です。
本来より早い位置に終止コドンができると、短いタンパク質しかつくられなくなることがあります。
ここまで見てきた塩基置換、SNP、同義置換、フレームシフトは、教科書の中だけの言葉ではありません。
実際の研究でも、塩基配列を比べて変異を探します。
僕自身も、あるウイルスの研究で、実際に塩基配列を比較して変異を追っています。
そのウイルスでは、変異が起きることで強毒化している可能性が考えられています。
そのため、どの位置の塩基が変わっているのか、どの変異がウイルスの性質の違いに関係しているのかを調べています。
これは、TがCに変わってる??とか。
画像のように、実際の研究では複数の塩基配列を並べて比較します。
ほとんど同じ配列が並んでいる中で、一部だけ違う塩基が見えることがあります。
その違いが、ただの偶然の変化なのか。
性質の違いに関係する変異なのか。
そこを調べていくのが、変異を追う研究です。
高校生物で学ぶ塩基置換、SNP、同義置換、フレームシフトは、教科書の中だけの言葉ではありません。
実際の研究でも、配列を比べて変異を探し、その変異が性質の違いに関係しているのかを考える、実践向けの内容なんです。
高校生物は、用語を覚えるだけでは点数につながりません。
塩基置換、SNP、同義置換、フレームシフトのような内容も、言葉だけを暗記するのではなく、「何が変わるのか」「何が変わらないのか」「その結果どうなるのか」を整理して理解する必要があります。
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