看護系受験は
生物と化学どっち?
選択科目の決め方を紹介
看護系受験では生物と化学のどちらを選ぶべきか。看護系受験指導も行う塾が、学年別の判断手順を解説します。
「看護師を目指すなら生物」と、高校や塾で言われることがあります。方向としては間違っていません。ただ、この一言だけで決めると、志望校の入試で使えない科目を1年以上勉強していた、という事故が起きる可能性があります。
まず志望校の入試科目を確認する。そのうえで、生物と化学のどちらも使え、現在の得意度や仕上げるまでの負担にも大きな差がないなら、私は生物をすすめます。
入試だけでなく、看護系に進学した後も、人体の構造と機能、代謝、微生物、感染、免疫などを学ぶからです。一方、化学がすでに明確な得点源になっている人まで、生物へ変える必要はありません。
この記事では、看護系受験の指導経験をもとに、生物と化学の決め方を具体的に整理します。
まず、志望校の入試科目を確認する
看護系入試の科目は、大学・学部・入試方式・年度によって異なります。理科が必須とは限らず、数学との選択になる場合や、理科を使わない方式もあります。さらに同じ「生物」でも、生物基礎までの学校と、生物基礎・生物の両方を課す学校では、準備する範囲が違います。
2026年8月21日時点で、大学公式ページに掲載されている2027年度入学者選抜の概要を見ると、その違いがよく分かります。
| 学校・方式 | 理科に関係する選択部分 |
|---|---|
| 東京慈恵会医科大学 医学部看護学科・一般選抜 | 数学Ⅰ・A、化学基礎、生物基礎から1科目 |
| 日本赤十字看護大学・一般選抜 | 数学Ⅰ・A、生物基礎・生物、生物基礎・化学基礎から1科目 |
| 日本赤十字看護大学・共通テスト利用選抜Ⅰ-A | 選択科目に化学、生物、化学基礎と生物基礎の組み合わせなどがある |
※表は試験科目全体の関係部分のみを抜粋しています。日赤の2027年度学生募集要項は2026年10月以降公開予定で、同大の行は現時点の選抜概要に基づきます。
日赤の一般選抜には化学単独の選択肢がなく、化学を含む枠は「生物基礎と化学基礎」です。つまり、化学基礎を使う受験生も生物基礎を避けられません。
慈恵の例では、数学・理科が一つの選択枠です。生物基礎を選ぶことは、同時にその枠で数学Ⅰ・Aを使わないという判断でもあります。生物と化学だけを比べず、数学を含めて最も得点できる科目を考える必要があります。
このように、科目選択は「どの科目が役立つか」だけでなく、どの受験枠を使うかという戦略そのものです。同じ大学でも、一般選抜と共通テスト利用選抜では条件が変わります。
確認するのは、次の3点です。
- 理科は必須か、国語・数学などとの選択か
- 生物と化学のどちらが使え、どこまでが出題範囲か
- 科目の組み合わせ、配点、試験時間はどうなっているか
先輩の話や古い進路資料ではなく、最後は必ず大学・学校が公表する最新の募集要項で確認してください。
指導する側の本音:条件が同じなら生物です
入試条件を確認しても、まだ生物と化学のどちらでも受けられる。現在の成績にも大差がない。そこまで条件が並んだなら、私は生物をすすめます。
オーオンでは、日本赤十字看護大学、東京慈恵会医科大学の看護系、防衛医科大学校の看護系、看護専門学校などを目指す受験生を指導してきました。その経験からも、科目選択は入試当日の点数だけでなく、入学後に何を学ぶかまで見て決めたほうがよいと考えています。
看護師養成課程では、「人体の構造と機能」や「疾病の成り立ちと回復の促進」などを学びます。実際、日本赤十字看護大学さいたま看護学部の1年次には、解剖生理学・生化学・微生物学を含む「人体の構造と機能」や、感染防御に関する授業が置かれています。
高校生物と大学の看護学は同じではありません。それでも、次のようにつながります。
- 恒常性の理解は、体温・血糖濃度・体液の調節へつながる
- 細胞や代謝の理解は、生化学や病態の土台になる
- 免疫の理解は、感染症、予防接種、アレルギー、輸血の学習へつながる
たとえば大学で免疫を学ぶとき、自然免疫と獲得免疫、抗原と抗体、T細胞とB細胞の関係を一から覚えながら、看護の専門的な内容も理解するのは大変です。高校で一度学んでいれば、少なくとも最初の地図を持った状態で授業に入れます。
看護系へ進めば、生物に関わる勉強は避けられません。それなら、受験勉強と入学後の準備を兼ねられる生物には、はっきりした利点があります。
化学を選ぶべき人もいる
ここまで読んで、「では、看護志望なら全員が生物なのか」と思うかもしれません。答えは違います。入試では、まず合格できる科目を選びます。
次のような人は、化学を選ぶのが現実的です。
- 化学の得点が生物より明らかに高く、安定している
- 物質量や濃度などの計算を、順序立てて処理するのが得意
- すでに化学の学習が進み、生物を一から完成させる時間がない
- 実際に受ける併願先で、化学を使うほうが有利になる
「化学なら、演習量がそのまま点になる」とまでは言えません。化学も、法則や反応の意味を理解せずに解法だけ覚えると、条件の違う問題で止まります。ただ、基本概念を積み上げ、計算手順を整理する学習が得意な人には、得点源にしやすい科目です。
また、化学も看護と無関係ではありません。体液のpH、電解質、浸透圧、薬剤の濃度、生体内の化学反応を理解するときに役立ちます。生化学や薬理学にもつながります。
薬学・栄養・臨床検査などを併願する場合も、「医療系だから化学」と一括りにはできません。必要科目は学部と方式ごとに違います。自分の受験校一覧で化学が本当に有利かを確かめてください。
化学で受験した場合は、合格後に生物基礎の人体・恒常性・免疫を復習しておけば、入学後の負担を減らせます。
生物と化学では、得点の作り方が違う
生物は「暗記だけの科目」ではありません。用語の知識に加え、実験の設定、グラフ、長い問題文を読み、初めて見る結果を知識と結びつけて考える力が必要です。人体・遺伝・免疫などに興味があり、文章や図表から現象を整理するのが得意な人に向いています。
化学は、物質量、化学反応式、濃度など、前に学んだ内容を次の単元で使います。土台が曖昧なまま進むと立て直しに時間がかかりますが、数量関係を整理し、同じ原理を別の問題へ当てはめるのが得意な人には向いています。
定期テスト1回の点数だけで決めず、2〜3回分の成績と、過去問または入試レベルの問題で比べるのが確実です。高校で質問できる先生がいるか、授業が開講されているかという学習環境も、得点には大きく影響します。
学年別の決め方
高1:選択肢を残しながら、生物を有力候補にする
両科目の学習量にまだ大差がなく、看護志望が固まっているなら、生物を有力候補にします。ただし、志望変更や併願に備え、化学基礎も放置しません。高校の履修モデルによって選べる組み合わせが違うため、科目登録の前に確認しましょう。
高2:志望校と実際の問題で決める
第一志望と併願校を仮に決め、募集要項と過去問を見ます。「高2の夏が一律の変更期限」という決まりはありません。変更によって必要になる学習量と、受験までの残り時間を計算し、他教科を圧迫しない時期に決めます。
高3:合格可能性を最優先する
高3での安易な科目変更はすすめません。化学が仕上がっているなら、そのまま化学で合格を目指します。一方、両科目の完成度が近く、生物へ替えても受験校と学習計画に無理がないなら、変更を検討する余地はあります。印象ではなく、過去問の得点と残りの単元数で判断します。
迷ったときの判断手順
最後まで迷うなら、次の順番で決めてください。
- 第一志望と併願校を合わせて3〜5校、入試方式まで含めて一覧にする
- 最新の募集要項で、使える科目・範囲・配点を確認する
- 生物と化学の過去問または同程度の問題を、時間を測って解く
- 現在の得点、完成までの学習量、教わる環境を比べる
- 得点差が大きければ高いほう、条件がほぼ同じなら生物を選ぶ
決めた後は、根拠のない迷いで勉強を止めないことです。ただし、模試や志望校変更で前提が変わったら、その時点で計画を見直します。
まとめ:迷ったら生物。ただし、募集要項の確認が先
生物と化学のどちらも使え、得意度や必要な学習量にも大差がないなら、生物をすすめます。受験勉強を、入学後の看護学の土台にもできるからです。
生物への変更で合格可能性を下げるなら、現在の科目を仕上げ、入学前に足りない基礎を補えばよいのです。
生物を選んだ後に難しくなるのは、考察問題と記述問題です。知識を覚えるところまでは一人で進められても、「なぜその答案では減点されるのか」は自分で判断しにくい。答案を見てもらい、説明に足りない要素を直す練習で点数が変わります。
オーオンでは、オンラインと埼玉県桶川市の対面で、看護系受験と高校生物の個別指導を行っています。科目選択の段階でも、志望校・入試方式・現在の成績を一緒に整理できます。
参考資料
※入試科目に関する記載は2026年8月21日時点で確認した内容です。出願時には、各大学・学校が公開する最新の学生募集要項を必ず確認してください。
